日曜日。はらがへって、無性にラーメンがくいたくなった。
そこで、中華街の味千○ーメンに向かった。
以前友人と一緒に食べに行き、なかなか美味しくて
満足した店である。
Grand Centralから緑の地下鉄に乗って急行で2駅。
Brooklyn Bridge - City Hall で下車し、
巨大な市庁舎を横目に北東に歩く。
10分ほど歩くと中華街の南東の端に出る。
目的の味千ラー○ンは、ここにある。
中華街にあって明らかに日本人経営の
日本ラーメンが食える店である。
ラーメンは、日本に限る。
とんこつスープ、チャーシュー、腰のある麺。。
あの味は日本のものだ。
中国系の店で食べる麺は別物だし、
正直自分はあまり好きではない。
見えてきた、腹減った、ついにきた!
味千ラーメ○だぁぁ
入り口に元祖熊本ラーメン!などという
POPや、紹介された日本の雑誌の表紙などが
飾ってある。
らーめん、ラーメン、うれしいなぁ^^
私は、ほくほく気分で店にはいった。
One? (おひとりですか?)
Yep. (あい)
店員はみな中国人である。
席に通され、メニューがきた。
わくわくは頂点に達する。
写真に写ったおいしそうな日本ラーメンたち、そして、
番外編、カレーや、チャーシューご飯、餃子、
その他各種おつまみも充実している。
全品、日本語・中国語・英語の3ヶ国語表記で
メニューのくせに、なんだかにぎやかで
グルメ雑誌を見ているような気分である。
どれもおいしそうだ。
どれもこれも美味しそうなので、
悩みに悩んだ。
そして、悩みぬいた末
やってきた中国人ウェイトレスに注文する。
Hi,
I'd like to have This.
Number 6
negi ra-men.
and .. Beef curry,
number 37.
- Something to drink??
Yeah,
let me see.
Well, hmm,
Coke, .. er..
No.
an Iced tea, please !
こうして私は、
・ネギラーメン
・ビーフカレー
・アイスティ
の3点を注文した。
ラーメン&カレーって
なんやそら。
明らかに、食いすぎである。
しかし、これには理由がある。
この味千ラー○ン、
ロケーションが中華街なので
値段が安いのだ。
いつも平日お世話になっているミッドタウンの
「めんちゃんこ亭」は、ラーメン1杯7ドル~10ドル
ぐらいのプライシングである。
それに対し、ここ、味千ラーメンは、この近辺の
中国人もマーケットに入れているためか、
ラーメン1杯が4ドル~7ドル程度。
ついついたくさん頼んでしまうわけだ。
それに、私は今空腹である。
また、ここまでのトリップ地下鉄往復4ドルかかったのだ。
少々たくさん頼まないと元がとれない気がするのだ。
ということで、私は無事注文を終え、
ふと周りを見回した。
客は少ない。
もう昼食というには遅い時間帯だからだろう。
bgmにジャーニーがかかっている。
いいねぇ。
アメリカもあのころは輝いてたよなぁ。
ジャーニーが終わり、
次の曲が始る。
なぜか、次は日本の歌謡曲だ。
んー。。誰だっけこれ?
改めて聞くと、なかなかいい曲だなぁ。。
なんていったっけねぇこの人。。
んー。。
しばらくすると、ウェイトレスの中国娘が
私のものと思われるどんぶりを持ってきた。
(中国娘)Negi-Ramen?
(私) Thank you.
いよいよ、ラーメンとご対面である。
焦るな。
紳士は喰らいつくような反応をしては品格に反する。
わたしはゆっくりと、やってきたどんぶりに
目をやった。
さてと、、
!(;゜д゜)
なんだこれは!!
私は、自分の頼んだネギラーメンについて、
メニューの写真と、そこに書いてあった
Prime Rib Soup という表記から、
ある想定をしていた。
つまり、やってくるネギラーメンは、
コクのある濃厚なとんこつスープに、
半醤油卵と、ゴマや焦がしネギが浮かび、
その上に雪のように白い細かく刻んだネギが
ふわりと乗った、私の大好きなタイプの
豪華ラーメンであると思い込んでいた。
しかし、私の前に置かれたラーメンは、
明らかに何かが違っていた。
まず、
キャベツの千切りのようなものが乗っかっている。
あれ?
おねぇさん、
注文間違えたでしょ?
あはは。。 えーっと。
しかし、彼女は、さきほど、
たしかに不思議な発音で
NegiRamen とつぶやいて、
このどんぶりをここに置いた。。
。。
ふむ。。
私はひとつの仮説をたててみた。
これは、キャベツ色をしたネギが、
一般的にはキャベツ千切りサイズ(幅1ミリ~2ミリ)
として知られる大きさに
切られているものなのかもしれない。。
仮説を検証すべく、わたしはその
千切りキャベツのようなものを口に運んだ。
仮説は当っていた。
ネギの味がした。
。。えー。。っと。。
ま、見た目はともかく、
ネギはネギだし。いっか。。
ここはアメリカなんだし。さ。。
こんなことで動じちゃあかんね。
さて、では気を取り直して、麺を、、
と、私は、キャベツ千切りの下に隠れた麺とスープの
レイヤーに箸を進めた。
む!! ((((゜Д゜;))))
スープが透き通っている!
まてまて。。落ち着け。。。
私のポジティブ思考回路はフル回転だ。
負けてなるものか。わたしのビューティフル
サンデーランチはハッピーなものでなくてはならない。
見た目は味とは関係ない。
ネギで意表を突かれたばかりじゃないか。
このPrime Rib Base Soupも、
透き通っていながらにして、
私の期待どおりの、
濃厚とんこつ味なのだ。
きっと、絶対、。。
ずずず。。
( ̄ー ̄)
んー。。
やっぱ、見た目どおり、
さっぱりめじゃのぅ。。
ポジティブ回路は焼ききれたようだ。
。。
はぁ。。
まてまて、まだ負けではない。私は強いのだ。
第二心理リカバリ機構がアクティベートする。
「がっかり心理」を薄めるため、経営分析をトピックとした
「がっかり迂回回路」にスイッチが入る。
なるほど、中国人のお客さんに合わせて
中国風アレンジしてるのねぇ。。
ロケーションからしてしょうがないか。。
ここだと、rentはたぶんミッドタウンの
半分ぐらいなのかな??もっと低いだろうな。。
人件費は。。
迂回回路の活性化により、
がっかり感情はしっかり緩和された。
リカバリに成功した私は、残るカレーと
アイスティに期待をのこし、
40%ほど中国ラーメン化した
熊本ラーメンをそこそこ楽しんだ。
食えなくはないさ。
それに、日本の不味いラーメンよりは
ぜんぜんうまいよ。
うんうん。
卵と一緒に食えば、ちょっと
こってりっぽいしさ。
馬鹿な私は、自己洗脳しやすい。
幸せだと思えば幸せになれてしまうのが、
私の最大の強みである。
そして、しばらくして期待のカレーがやってきた。
待ってました!
これで形成逆転である。ちょっとラーメンは
ハズレ気味だったけど、ついにカレーがきたのである。
もう安心である。
私は安心しきっていた。
私がカレー中心極限定理と呼ぶ定理が
世の中に存在するからだ。
カレー中心極限定理について説明しよう。
この定理は、簡単にいうと、
店によるカレーの味は、それぞれ特有のばらつきを
もっているものの、全体としてみたとき、(一部の
例外を除き)それは、カレーとしての特性をもっており、
かつカレーとしての特性を持った食品は、
必ずそこそこ食える。
というものである。
私の経験上、3シグマ、いや、4シグマぐらいの
範囲でこの法則が成り立つのだ。
私は30年の人生の中で、この例外に出会ったことは
2度しかない。
その2度を除き、カレーをたのんで、食えなかった
ことはなかったのだ。
つまり、私にとって、カレーは低リスクな、期待効用の
安定した食べ物なのだ。
今回のカレーは、メニュー写真をみたとき、
さらさらしていて、私の理想の
カレーとは違うものであることは想像されていた。
さらに、福神漬け、及び、らっきょうがついていないため
その時点で私の中でのカレー格付けは最高でもCである。
最初から高望みはしていない。
そこそこの満足が約束されていることに意義があるのだ。
このようなpre-existing conditionの元、
私はカレーと対面したのである。
そして私は、とくに大きな期待はせず、
しかし一定の安心感をもって、カレーと
ライスをちょうどよい比率でスプーンに杓い
口にいれた。
((((゜Д゜;))))!!!!
び、、、
微妙だ!
3シグマは越えていないが、
確実に2シグマは越えている。
不思議な香りが口の中にひろがっていた。
全体を支配するカレーの味はランクで
いって、D程度だ。
前述のように福神漬けがついていない時点で
C評価より上はありえないので、まずまず
期待値といったところだ。
しかし、
決して、破壊的にではないが、微妙に
不思議な香りがする。それがなんだか
薬品的な感じの香りである。決して
心地よい香りではない。
微妙だ。。。
微妙すぎる。。
スレスレだ。。
愕然とした。
確実と思われたカレーによる
安定効用がもたらされなかったのだ。
予想外の事態だ。
ここは、日本人経営のラーメン屋であると私は
確信している。メニューや、店のロゴデザインからして
絶対にそうだ。
なのに、なぜ、このような味になるのか。。
二つの可能性が考えられる。
#可能性1
中華街の中で、日本人客があまり来ないため
日本人的味ではもうからず、中国人好みにアレンジした
#可能性2
経営者は、現場を中国人主任に任せ切りにしている。
ふむ。どちらにしろ、
私は、ここのターゲット顧客ではないということか。。
参ったなぁ。。これは。。
ひょっとしてやってしまったかもしれない。。
。。そうだ。。やってしまったっぽいなぁ。。
。。私としたことが、。。うかつだった。
日本ラーメン店だと思って油断していた。。
そう、私は、
うかつにも、アメリカで食べ物を選ぶ際の
大原則を忘れてしまっていたのだ。
アメリカでは食品選択に際して冒険をしてはいけない。
軽い気持ちで、
「なんだか、これおいしそう!」
なんて選ぶのは、非常に危険である。
そう思ってたべた、幾多の”食品”は、
私に、世界の広さ、味覚表現の可能性の広さを
教えてくれたことを認めよう。。
しかし、9割9分、まずかった
高校生の時、ニューヨークに初めて降り立ったあの頃。
たくさん失敗をして家族みんなで悟った法則。
そうなのだ!
アメリカでは、
日本人コミュニティや、日本人の口コミで
「これは美味い」と認定された以外のものを食べるのは、
常に高いリスクを伴っているのだ。
近所のスーパー、D'AGOSOTINOのスナック菓子コーナーで、
金髪の美しい女性が、
「これおいしいのよー」
「3パックぐらい買っちゃおうかしら!」
「あなたも、ためしてみて」
などと話かけてきたので、
ためしに、それを買ってみたことがあった。
スナックは
むせるような強烈な
チーズ爆弾味であった。
普段ならそんな馬鹿なことはしない。
金髪美女に惑わされ油断してしまったのである。
また、こんなこともあった。
私がいつも買うダノンの証明済みヨーグルトの
横に、一本4ドルもする200ミリリットルぐらいの
超高級飲むヨーグルトがあった。
みるからにおいしそうなビンに入っている。
1本400円の飲むヨーグルトなんて、日本にもなかなか
売ってないべ。フフフさすがは、金持ちの町
ニューヨークミッドタウンじゃw わしもプチ貴族として
このくらい買っちゃうよーん!
1本400円の超高級のむヨーグルトは
死ぬほど濃い味で
飲んだら喉がカラカラになった。
普段ならこんなことはしない。「おいらもプチ貴族」
なんていう思い上がりが、私に油断を与えたのだ。
アメリカになれたとはいえ、まだ、
油断するとこういう目にあう。
そう、日本風ラーメン屋だからっていって
油断してはならなかったのだ。
しょうがない、最後のアイスティに賭けよう。
すっきり午後ティーですべてを洗い流してしまえばいいんだ。
「終わりよければ全てよし。」
先人は良い言葉を残したものだ。
っていうか、アイスティまだかよ。。オイ
食い終わっちゃうじゃねぇか。
ハァ さては、
日本のファミレスみたいに、
「食後のアイスティで
どうぞごゆっくり」
なんていう風に解釈したな。
俺は、一緒派なのに。。
しょうがない、催促するか。。
一息ついて、ポジティブ回路を強制稼動する。
私はいかに追い詰められようと紳士であるのだ。
丁寧に仮定法でにこやかに、お願いしてみた。
Could you bring my iced tea now?
店員がちょっと変な表情を返した。
ちょっとにこにこしすぎだっただろうか?
まあいいや。
そして、1分後、大きなグラスに、泡だった
アイスティがやってきた。
。。
泡立ってる。。
。。
いや、
けっこう、泡立ってる。。
まあいいや。。一生懸命
かき回してくれたのだろう。。
ぜったいそう!
ぜったい洗剤じゃない!
もうやけっぱちである。
おいしい午後ティで、すっきりさっぱりしよう。
ストローは、上半分紙かぶり形式で、
すでにささった状態でやってきた。
私は、その紙を抜き取り、おもむろに
まだ泡立っているアイスティをちゅーっと吸う。
。。。
(iдi)アマァァィ;;
。。
(iдi)しかも強烈レモンもどきフレーバァァァ;;
。。
なんと! ここにきて、意外な伏兵の登場である。
アメリカ勢である。
中国と日本の間を揺れ動いている限り、
午後ティのウーロン茶の間の内分点にアイスティの
味は落ち着くはずだった。
しかし、
ここは良く考えたらアメリカだった。。
中華街の日本ラーメン店ではあるが、
ニューヨークなのだ。
アレがでてくる危険性は予測できたはずなのに。。
弱ったところに
ネスティの登場である。。。
完全敗北。。という言葉が自然に頭に浮かんだ。
一瞬の気の緩みが全てを台無しにするとは、
まさにこのことである。
3戦3敗とはこのことである。
惨めなさびしい本日の敗者とは僕のことである。
自分の油断が恨めしかった。
空腹だったとはいえ、
いくら美味しそうなメニューだったとはいえ、
ここはアメリカなのだ。。
あるレストランのひとつのメニューがそこそこ
食えたからといって、
同じレストランの別のメニューに世界の広さを
痛いほど思い知らされる。
それが日常茶飯事な油断禁物のアメリカにいるのだった。。
まあいいさ、今日は学んだよ。。
まあいいさ、blogに書くねたができたよ。
まあいいさ、俺は今生きている。死んだわけでもない。
いいじゃんいいじゃん(*´Д`*)
私は、人工レモンフレーバーネスティを飲みほし、
最後の笑顔で、ウェイトレスに言う
Check please!
そして、伝票がやってきた。
なぜか、やってきた伝票は、2枚あった。
1枚目はいつもの見慣れた
レストラン伝票である
合計額に、税額の2倍にあたるチップを足した
金額置いて退散すればよいのだ。
んで、2枚目って。。?
いやな予感がして、
見ないほうがよいかなとは思った。
が、やはり、ちらっとみてみてしまった。
・Negi Ramen
・Beef Curry
・Total
。。。
やっぱ、忘れてたのね (;´д⊂)
アイスティ。。
食後に持ってくるとか、
・・ 配慮とか、、そういうの
。。 あるわけないもんね。。。
アメリカの中華街なんだから。。
かくして、
日本人経営者が、少なくとも半年は
現場に来ていないことを確信し、
私は店を後にした。
明日からまた仕事だ。。
日曜日の太陽は沈みかけ、
ニューヨーク中華街にはつめたい風が吹いていた。
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